別れとアイデンティティ
もう恋は、冷めている。自分でもはっきりとそれがわかる。
その恋は、「愛」にはならなかった。これが、「恋の終わり」ってやつ?ひとりで家路を歩きながら思うことがだれしもあるでしょう。
H美もそうでした。はじめて1年以上つきあった相手、でもその恋は終わった、そう私に言いました。
彼もそうであるみたい、態度でわかる。彼の中でも恋は終わったのです。
彼はいつ別れを切り出すか、考えているみたい、H美はぽつぽつ話しました。
「でも困るの。私は彼の彼女でなければ、何者でもなくなってしまう。もう戻れない」
H美は聡明な女性です。自分の感情をよく知り、自分の感覚を言葉にできる。
H美はやや過保護な家庭で育ちました。だから、それまでは、親の娘である、ということだけで、不安はなかった。
しかし恋人と1年以上付き合ううちに、H美は精神的にも自立したのです。もう家庭には、自分の居場所、自分のアイデンティティはないのだと、自分で気づいたのです。
H美は悩んでいました。H美にとって彼氏と別れ、「自分探し」をする勇気や力が自分にあるだろうか。みんなそうなんだよ、私はいいました。みんなそれを探して生きてる。
H美は、結局自分から別れを切り出しました。当然、彼氏はその提案を歓迎しました。H美は「もうすこしだけ心をおいておいてくれないか」と彼氏に頼みました。彼氏はそれを拒み、H美は少し落ち込んで、みるみる強くなりました。
どんな別れも、一時はさびしいもの。しかし、人を強くするものでもあるのです。